■ ■ ■
昔話をしよう。
俺が1歳の時、妹が産まれた。
名前は、千果。
俺は覚えてないが、父さんと母さん曰く。
『誠一郎は妹が産まれた時、すごく喜んでいたんだよ』
……らしい。
4月に3歳の誕生日を迎えた頃には、当時の俺からしてみればまだまだ赤ん坊も同然の、3月が誕生日である1歳の千果を、率先して世話していた。
父さんと母さんにも負けないくらい、妹が大好きだった。
『にーちゃ!にーちゃ!』
千果が笑顔で、てくてく俺の元に歩いてくる。
ちなみに、千果が一番最初に覚えた言葉は「にーちゃ」。
俺を表す言葉だった。



