番犬男子





10年前と、重なる。



俺のせいだ、と。

言われてる気がして、何回も頭を振った。



お兄ちゃんのせいじゃない。


ナイフを使った強盗犯のせい。



お兄ちゃん、自分を責めないで。




雪乃のカーディガン越しに、流血した背中を避けて肩を抱いている、お兄ちゃんの無骨な手に少し力がこもる。



「千果、掴まれ。飛ばすぞ」



憂慮の色が溶けない中、お兄ちゃんに言われた通り、ぎゅっとしがみついた。



あたしの傷に障らない程度に速く、走り出す。


呆然としていたみんなも、慌ててお兄ちゃんを追いかけた。




あたしは大丈夫なのに、むしろお兄ちゃんを守れて喜んでるのに。


どうして、あたしは“あの日”みたいに、お兄ちゃんに傷ついた表情をさせちゃうのかな。



お兄ちゃんを傷つけたくないと願うのも、実際傷つけてるのも、いつもあたし。