番犬男子





お兄ちゃんの突飛な行動に、あたし以上に周りがびっくりしている。



お兄ちゃんにお姫さま抱っこされる日が訪れるなんて夢みたい。


ハッ、もしや、これは夢!?



ほっぺをつねるまでもなく、背中の痛みは本物。


夢じゃ、ない。

ビバ!現実!!



「傷、痛むか?」


「え、ぜ、全然!ちょっとかすっただけだよ!」



ひゃ~、お兄ちゃんの顔がすぐそばにある!


何この特等席、最高!



幸せ絶頂なあたしとは裏腹に、お兄ちゃんは切羽詰まったような様子で不安そうにしていた。



「ごめんな」


「え……?」



小さく呟かれた謝罪に、浮かれていた気持ちが沈んでいく。