番犬男子





お兄ちゃんと遊馬と稜と雪乃だけでなく、この場にいる双雷の下っ端も敵を冷ややかに蔑んでいる。



「双雷にケンカを売ったこと、千果さんを傷つけたこと……今更後悔してたって遅ぇよ?」


「ひぃっ!!」


「さあ、どう始末してやろうか」



夕闇に塗り替えられていく空の下、八重歯を唇の隙間から覗かせて威嚇する番犬が、一番星の輝きを曇らせる。



夏休み最終日に抱いた、恐ろしさと苛立ちと、それから苦手意識。


それらはとっくに朽ち果てて。



新たな感情を、届ける。





「お前ら全員、許さねぇ」



青筋を立てながら指の骨を鳴らすお兄ちゃんがそう告げた途端、アイコンタクトやゴングも何もなく、



双雷が、動いた。