番犬男子






「げほっ、げほっ」



強盗犯は腹の底からむせ返ったような、血の混じった咳を繰り返しながら、口の端に垂れた唾液を拭った。


お兄ちゃんと幸汰を睨んでいるつもりの両目は、恐怖で小刻みに震えている。



集団意識からか、元魁皇の下っ端は強盗犯の近くに集まって、募る畏怖をごまかそうとしていた。



逆に、一か所に固まらずに各々闘っていたところに佇んでいる双雷のメンバーは、不良集団を囲んでいるよう。




「なあ」


墜とされる、お兄ちゃんの殺伐とした声。



「覚悟できてんのか?」



不良集団に向けられていたお兄ちゃんの視線が、一瞬あたしと交差した。



見間違い?

ううん、確かに目が合った。