番犬男子






怒涛の攻撃の嵐が止み、あたしの呼吸器官が再び働き出す。


お兄ちゃんと幸汰、すごすぎ。



すると、寒々しい風を直にかすめていた背中に、優しくカーディガンがかけられた。



「チカちゃん、大丈夫?」


「雪乃……。うん、平気」


「それ羽織って、安静にしていてね。いいわね?」



あたしは「ありがとう」と頭を縦に振って、雪乃のカーディガンをきゅっと指先で握る。


あったかいな。



チラリと一目したお兄ちゃんは、刺々しいオーラで激怒しているけど、焦燥や錯乱は感じられない。


他のみんなも同様で、心の内側で安心した。




……よかった。


お兄ちゃんにも、もちろんみんなにも、今負った傷口の流血に驚きはしても、背中自体はあんまり見られていなくて。



本当に、よかった。