番犬男子






鋭くも鈍い音に、一瞬の静寂が漂った。



ポタリ、ポタリ。


ナイフから、あたしの背中から滴る、真っ赤な鮮血。




痛い。

痛い。


……痛い。



服をも切られ、素肌には直接、激痛とまではいかないが、じりじりと熱っぽい苦痛が襲う。


目尻に涙がにじんだ。




それでも。




「あんた、最っ低!」



あたしは、強気に強盗犯を睨んで、怒声を浴びせた。



コンビニ強盗の時も、今日も、刃物で人を傷つけることに抵抗がないなんておかしい。


自分が最低なことを、自覚しろ!




「な、」

愕然としていた強盗犯が、怒りで我に返り、無意識にあたしに一歩寄る。