あたしは、迷わず駆け出した。
お兄ちゃんは、近づいてくる強盗犯の気配を察知している。
でも、10人の不良が壁になっているせいで、強盗犯の手に握られたナイフには気づいていない。
あたしが守るよ。
あの額の傷のように、お兄ちゃんを傷つけさせはしない。
強盗犯がお兄ちゃんに接近し、不気味に笑う。
ぎりぎりまで距離を詰めて、ナイフを持つ手をゆっくり振り上げた。
ナイフの存在を知らずに対処しようとしたお兄ちゃんが、夕日に反射してぎらつく刃【ヤイバ】を目の当たりにし、瞳を丸くした。
「お兄ちゃんっ!!」
――ザシュッ……!
振り下ろされたナイフの鋭利な刃先が、強く裂いた。
「……ち、か?」
お兄ちゃんの盾となった、あたしの背中を。



