番犬男子





レジに並ぶ行列の最後尾に、あたしも並ぶ。



ガヤガヤと騒がしいルーズな店内だから、電話しても多少は平気だよね?


店の外に注意を払いながら、ポケットにしまっていたスマホを取り出した。



連絡先は当然、お兄ちゃん。



プルルルル、プルルルル。

5回目のコール音の後。



『誰だ』



「もしもし」もなしに、低音ボイスが耳に届いた。


警戒しまくってる、お兄ちゃんの声だ。



「もしもし、お兄ちゃん?あたし、千果だよ」


『……お前、なんで俺の番号知ってんだ』



警戒が解かれ、呆れた声色で言われた。



「両親がお兄ちゃんの番号を知ってるんだから、あたしも知ってるに決まってるじゃん!」