番犬男子





誰があんたたちの人質なんかになるか。




強盗犯がおもむろに片腕を上げた。


あたしは深呼吸する。



ポケットにスマホが入っているのを確認した後、強盗犯の片腕があたしを示し「かかれ!」と命じた。


不良集団が一斉にあたしを襲い出した瞬間を狙って、あたしも地面を蹴って走り出す。



逃げるが勝ちだ。




不良たちよりも小柄な体型で反射神経がいいという長所を活かして、あたしを取っ捕まえようとする不良たちをかわしていく。


俊敏にかいくぐりながら、双雷のたまり場のある西側を目指して、コンビニ前を走り過ぎる。



その時、突然誰かに肩を掴まれた。



「逃がさねぇぞ」



視線だけ後ろに泳がせれば、そこには強盗犯の顔がすぐ近くにあって、気持ち悪かった。