唐突に立ち上がった幸汰に、みんなの視線が集まる。
そんな幸汰の視線は、ためらいがちにあたしに送られた。
「ち、千果さん」
怒られるのかな。
尊敬してる侍に傷をつけたあたしを、許してはくれないだろうな。
最悪、ここから追い出されちゃうかも。
そうのんきに構えていると。
「買い忘れてる物があるよ!」
「え……?」
予想の斜め上を行く内容を告げられ、あたしもみんなもポカンと固まる。
買い忘れ?
買わなきゃいけないのは、番茶の茶葉だけだったでしょ?
どうしてそんな、わかりきった嘘をつくの?
「今から買いに行こ!」
「えっ、ちょ、幸汰!?」
強引に手を引かれ、されるがまま「行ってきます」もなしに、幸汰に引きずられるように幹部室を飛び出した。



