あたしの真っ直ぐな視線が、お兄ちゃんの愕然とした視線と交差して、すぐ逸らされた。
お兄ちゃんだけでなく、他の4人も衝撃を受けている。
明るかった室内は、気づけば静まり返っていた。
今、教えるつもりはなかった。
記憶が戻れば、わかることだから。
でも、教えないと、前に進めない気がした。
あたしが“あの日”負わせてしまった傷。
お兄ちゃんが記憶を失くしたのも、お兄ちゃんをずっと傷つけていたのも、全部全部あたしのせい。
それでも、お兄ちゃんが大好きで、ずっと隣にいたいの。
形容しがたい、青ざめた雰囲気が波打つ。
今日の天気が曇りでよかったな。
快晴の青空は、今のあたしには眩しすぎる。
誰もが何を言えばいいのかわからず、絶句している中、混沌とした感情を纏った沈黙を断ち切ったのは、
「っ、あ、あの!」
意外にも、幸汰だった。



