番犬男子






「うーん……だけどあたしは、その左目の赤を血の色だとは思えないなぁ」


「え?」


「もっと綺麗で鮮やかな、情熱の色だよ」



あたしは、既に前髪に覆われた稜の左目を見ながら、穏やかに微笑んだ。



幼くも切ない恋情と、静かに燃える情熱が、あふれんばかりに瞳を染めてるような、深い赤。


血の色なんかより、そう考えたほうがいいと思わない?




すると、ずっと悲しそうだった稜が、ふっ、と噴き出した。



「なんだよ、情熱の色って」



クツクツ喉を鳴らして、不格好に笑う。


弾んだ笑い声に紛れ込ませるみたいに、稜の頬を一滴の涙が伝った。



ろ、う?

泣いてるの?


初めて、稜の涙を見た。



輪郭をなぞって落ちたその涙は、ありがとう、なんてらしくなく言ってくれてるような気がして、胸が熱くなった。