番犬男子





もう傷つけたくなくて、傷だらけの記憶を蘇らせようとお兄ちゃんに会いに行ったあたしとは、違う愛し方。




「お前だって、もし自分が誰かに傷を負わせちまって、それを見たら、辛くなんだろ?」


「……うん、そうだね」



瞳の裏側に焼きついた、お兄ちゃんの額の傷痕。



お兄ちゃんは全然気にしていないようで安心したと同時に、「ごめんね」って謝りたくてたまらなくなった。


今謝ったって、お兄ちゃんには届かないけれど。



「あたしも、幼なじみの子と同じ、かな。あたしのせいだって、苦しくなる」



でも、と続ける。




「それは相手を想ってるからこそ。稜もそうでしょ?」


「っ……」


「だから、隠した。相手の心がこれ以上傷つかないように」


「……そう、だな」




稜自身も、無意識のうちに自分を責めて、責めて、責めて。


その左目を、嫌ってる。


幼なじみの子のそばを離れた今でもなお、前髪だけじゃなく伊達メガネまでかけて、壁を作りながら。




囚われて、苦しんで、もがいて。


なんだか、似てるね。

あたしと稜。