幼なじみの子も、稜と同じ感情かはわからないけれど、稜のことが好きだったんだろう。
だからこそ、稜にどれだけ「違う」「お前のせいじゃない」と慰められても、自分を許せなかった。
どんな経緯であれ、傷つけてしまったのは事実。
大切な人を傷つけた時の辛さは、あたしもよく知ってる。
「あいつが、鮮血みてぇに赤いこの左目を見る度に、苦しそうな表情をすんのが、嫌だった。さらに自分を責めて謝られんのが、嫌だった」
稜の手が離れると、前髪が揺れた。
その隙間から垣間見えた、稜の左目も儚く揺れていた。
「それで、隠したんだ?」
「ああ。前髪を伸ばして、隠して、あいつと距離を置いた。あいつのそばには、もう、いられなかった」
それは、たったひとりのための、ひどく優しい理由。
赤色と褐色のオッドアイというだけでも、異端児を煙たがる周りに忌み嫌われていたのに、自分の目が好きな人の“傷”になってしまったら。
悲しくならないはずがない。
距離を置かなければならなかった。
そばにいていけなかった。
好きな人の“傷”を、えぐってしまうから。



