番犬男子







「お前の左目、見えねぇんだってな」




それも噂で聞いたような言い方でこぼされた、精一杯の強がり。


静寂の中、嘲笑がクリアに広がる。



明らかに稜の動揺を期待した、拙い挑発。



しかし。


「だから?」


稜に動揺の色は表れず、冷然としている。



否定、しないんだ。


左目に視力がないのは、本当なの?




……でも、今は関係ない。



そっちが敵を動揺させようとしたのなら、こっちも仕返ししてもいいよね?


最初に反則ギリギリの行為をしたのはそっちなんだから、反論は受け付けないよ。



「あのさ」



稜の揺さぶりに失敗して、完全に余地を失くしたダメ男の仲間が、あたしの無機質な声に、ビクリと反応する。