番犬男子





稜が片腕であたしを抱きしめ、助けてくれた。


そう理解するのに、数秒もかからなかった。



「黙れ、クズ」



暴言を捨てた直後、稜の拳がダメ男の顔面をぶん殴る。


間を空けずに、稜はダメ男の脇腹を蹴り飛ばした。



連続で轟いた鈍い音が消える前に、ダメ男は壁に背中と後頭部をぶつけ、そのままもたれるようにして気絶した。




たった一瞬で、終わった。




「大丈夫か?」


「う、うん、大丈夫。ありがとう」



戸惑いながらお礼を言うと、稜は「ん」とだけ返す。


稜を睨んでいた、もう1人の不良はどうしたんだろう。



稜の背後に視線を向けたら、そこには肩で息をしている、ダメ男の仲間がいた。