ダメ男がいきり立ちながら、あたしの胸ぐらをがさつに掴んだ。
鼻息がかかって、気持ち悪い。
「むさくるしい。離れて」
あたしは、ダメ男の手首に爪を食いこませて、力いっぱいひねる。
反射的に胸ぐらを解放したダメ男は、不意打ちを食らって悔しそうにしていた。
女子だからってなめてるから、痛い思いをするんだよ。
「くっそ。女ごときが……!」
舌打ちまじりにガンをつけ、執念深く襲いかかってくる。
さあ、次はどんな方法でやっつけてやろうか。
「千果!」
「え……?」
突然、強く肩を引き寄せられた。
視線を持ち上げた先には、凍てついた怒気に染まる、稜の表情。



