玄関にも男物の靴はなく、おばあちゃんの物と思しき靴だけだった。


“彼”はどこ?



「あの子なら、大体夜遅くに帰ってくるよ」


「え!?」



あたしの考えを察してくれたおばあちゃんの言葉に、思わず目を見張らせる。



夜遅く!?


じゃあ、あたしがどれだけ早くここに着いていても、夜にならないと“彼”は帰ってこないの?




「おばあちゃん、心配じゃないの?」


「そういう年頃なんじゃよ」


「でもさー」


「それに、心配しなくとも、あの子は優しくていい子じゃから大丈夫じゃよ」



本当に心配してないんだなぁ。



おばあちゃんが、羨ましい。


“彼”と2人で、10年一緒に生活してきた、信頼関係がある。



あたしには、ない。