番犬男子





幸汰をチラリと一瞥すると、幸汰はあたしの番茶をまた飲んで、微笑んでいた。


その笑顔は、あたしの番茶に向けてのものなのか、それとも尊敬するお兄ちゃんを想像してのものなのか、あたしにはわからなかった。




……そういえば。


ずっと気になっていたことがある。



「あのさ、幸汰」


「ん?」


「幸汰はどうして、お兄ちゃんの“番犬”になったの?」



一見、幸汰は不良と関わりを持つタイプに見えない。


どちらかと言えば、不良を遠ざけてそうな幸汰が、双雷の総長の番犬として君臨している。



何か特別なきっかけがあったんじゃないの?




聞く必要はないのかもしれない。



でも、聞きたい。


なぜか、そう思った。



お兄ちゃんが関係してるなら、なおさら。




「……憧れ、なんだ」



幸汰は、持っていた湯飲みを置いて、静かに呟く。



「初めて総長を見た時、『あの人についていきたい』って思ったんだ」