番犬男子







幹部室を去って幸汰の腕から手を放し、階段を下りる。


1階の扉のほうから見て、右手側の奥にある部屋に入った。




ここが調理室だ。


その名の通り、調理する部屋。



大きな冷蔵庫やオーブンなど、必要なものも普通必要じゃないものも抜かりなく設置されてたり、コンロが5つあったりして、例えるなら高級ホテルの調理場のよう。



無駄に広くて綺麗。

そう、無駄に。


料理してる形跡は欠片もないし、あたしがたまり場に来るようになった日から今日まで、この部屋を使ってるところをただの一度も目撃したことがない。




幸汰は調理室に入ってすぐのところにある、ステンレスの調理台の下の引き戸をスライドさせた。


そこには、茶葉とお菓子のストックが収納されていた。



補充用の番茶の茶葉が入った缶を手にする。



「あー、こっちも少ないな」


「今日飲めない?」


「今日の分で終わり、かな」



ストックも残りわずからしい。