番犬男子





雪乃と稜がまた笑う。


2人の会話を耳にして、体温が急上昇する。



「べ、別に懐いてないし!」


「そうかしら」


「そうだよ!ただちょっと……ほんのちょっとだけ、いいやつかもって思うようになっただけ!」



赤面して、勢い任せに反論したら。

雪乃と稜だけじゃなく、遊馬と幸汰、無愛想がデフォルトのお兄ちゃんまで失笑した。



な、なんで笑うの!?


前にもこんなことがあったけど、笑われる理由がわからない。



「相変わらずチカちゃんは可愛いわね」


「い、意味わかんない!」



笑われながら言われても、嬉しくないんですけど。


それでも照れちゃうのは、雪乃は嘘をついてないと知ってるから。




「幸汰、行こ!」


「……っ、はい」


「幸汰も笑わないで!」



あたしは照れ隠しに、笑いを必死にこらえる幸汰の腕を掴んで、強引に幹部室を出て行った。


扉が閉まっても、騒がしさはしばらく続いた。