今日は、お兄ちゃんが特に好きな日本茶か。



番茶には、渋みがあんまりなくて、香りがいいという特徴がある。


あたしは日本茶の中で一番好き。




幸汰は近くの棚を開けて、種類別に収納している茶葉の中から「番茶」とラベリングされた缶を取った。


ティーセットとティーポットではなく、急須と湯飲みを用意して、缶の蓋を開ける。



「あれ?」


「どうしたの?」



問いかけると、缶の中をこちらに見せた。


中身は空っぽ。

茶葉は使い切ってしまっていたようだ。



「下の調理室に行って、ストックあるか確かめてきます。あったらついでにそこでお茶を淹れてきますね」



そう告げた幸汰は、急須と湯飲みをトレーに乗せて、幹部室を出て行こうとする。



「あっ、待って幸汰!」



扉を開ける直前、ちょっと待った宣言をしたのは、何を隠そう、先日まで幸汰を苦手としていたあたし。