いつもの「幸汰くん」ではない番犬に恐れをなして、戦慄する女子高生の集団に、番犬が舌打ちをする。


涙目になる女子高生たちは、今まで完全無視していた周囲の白い目も気になりだして、この場から逃げて行った。





「千果さん」



幸汰が表の姿に戻って、振り返る。



「大丈……」


「どうしてよ」


「……え?」



大丈夫か、と聞き終える前に、あたしが聞く。


あたしのほうに向けられた幸汰の左頬は、うっすらと赤みを帯びていた。



どうして。



「どうして、あたしを助けたりしたの?」



幸汰の左頬に、そっと触れる。



始末屋として行動している幸汰にとっては、こんなの大したことないかもしれない。


だけど、痛いことには変わりない。



なのに、どうして。

あたしをかばって痛い思いをしてくれたの?