あたしの鋭い眼差しが、右腕を振り下ろす女子高生を射抜く。
さあ、どんとこい!
近づいてくる、がさつな手のひら。
視界に映る、嫉妬に狂った女子高生の歪んだ顔。
前に尾行ゲームをした時、あたしもこんな顔でお兄ちゃんの隣にいる幸汰に妬いてたのだろうか。
「千果さん!」
「え?」
突然、学ランに覆われた大きな背中が、あたしの前を遮り女子高生の顔を見えなくした。
――パンッ……!
刹那、勢いよく叩かれた音が、響き渡る。
あたしの頬に、痛みはない。
けれど、あたしは戸惑っていた。
「こ、うた?」
「なんでここに幸汰くんが……!?」
あたしと女子高生たちは、ほぼ同時にあたしの前にいる幸汰の名前をこぼした。
幸汰があたしの代わりにビンタされた?
あたしを、かばったの?
どうして?



