裏表あろうと、あいつは番犬。
あたしを助けようとは、しない。
夏休み最終日、あたしに迫ってきたバイク男に、幸汰が止めを刺してくれたのは、あたしのためなんかじゃない。
強盗犯とバイク男の2人を片付けることが、番犬の主である侍――お兄ちゃんの頼みだったからだ。
だけど、今回は違う。
双雷こそ関連しているが、これはあくまで女子の闘い。
なのに、幸汰が動くとは考えにくい。
「そんなに男が好きなら、そこら辺の男と遊んでなよ」
「こんな妄想女、好きになる物好きな男なんかいないでしょ!」
「それなー!」
幸汰が背後にいるとも知らずに、女子高生の集団は全員であははっ、と盛大にあたしを嘲笑う。
あたしは元より、苦手意識を持つ幸汰に助けを乞い、貸しを作るつもりはさらさらない。
1人でなんとかできる。
「僻みはそれで十分?」



