こうしてる時間が惜しい。
早くお兄ちゃんに会いに行きたい。
腕を掴むこの手を乱暴に振り払ってもよかったけれど、その前に、とりあえず話し合いで説得できるならそうすべきだろう。
「放して」
「あんたが双雷のみなさまから離れるんなら、放してあげる」
雪乃を囲っていた女子がいるから予想はしてたけど……なんだ、やっぱりそうだったんだ。
この集団は、全員双雷ファンってわけね。
女子高生の集団はようやくチャンスが来て調子づいたらしく、周りに通行人がいることも気にせず、リンチまがいないじめを始めた。
「あんた、雪乃さんの前で猫かぶって、遊馬さんには無理におごってもらって、さらには誠一郎さまにまで朝からたぶらかして……最低っ!」
お兄ちゃんにつきまとってるのは百歩譲って認めてあげるけど、雪乃の前で猫をかぶったり、遊馬に無理におごってもらった覚えはない。
嘘を真実と勘違いしないでくれる?
「どれだけ双雷のみなさまに迷惑をかければ気が済むの?」
「鬱陶しいんだよ!」
「これ以上双雷のみなさまに近づくな!」
「雪乃さんも遊馬さんも誠一郎さまも、あんたみたいなブス、嫌ってるはずよ」
あたしの腕を掴む力が強くなり、爪が食い込んで痛い。
雪乃と遊馬は「さん」を付けて、お兄ちゃんは「さま」を付けて。
わかりにくい差別化をしているところには、つっこまないでおこう。



