番犬男子





一向に足を止めないあたしに腹を立てた女子高生の集団は、走ってあたしの前に再び立ち塞がった。



「ちょっといい?」



勝手にテイク2を始められた。



さっきのはなかったことになったの?


どうでもいいけど。



あたしはやっぱり、女子高生の集団を横切る。



いくら無視できないような存在感を放っていたって、あたしはスルー一択。


それは変わらない。



あの集団に属す全員が、あたしを狩ろうとしているような、いかつい眼をしていれば、嫌でもわかる。


女子高生たちは、あたしをリンチしようとしているんだ。



そうとわかってて、のこのこついていく阿呆がどこにいる?



それに、どうしてこのあたしが、あんたたちに付き合わなきゃいけないの。


理由がないでしょ、理由が。



こうしたあからさまなリンチのお誘いは初めてで、若干興味をそそられたけど、あたしの最優先はいつだってお兄ちゃん。


あんたたちをかまってあげられる時間があるなら、お兄ちゃんに尽くしたい。