番犬男子







双雷ファンの女子たち数人は、朝からあたしとお兄ちゃんが一緒にいる光景を、偶然見てしまっていた。



「やだ、なにあれ」


「嘘ー!」


「あいつ、遊馬さんや雪乃さんだけじゃ物足りずに、誠一郎さまにまで言い寄ってるわけ?」


「調子乗りすぎじゃない?」



女子たちは、憎らしさを募らせる。



会話までは聞こえていないが、自分たちよりも断然親しそうにしていて、当然の如く嫉妬しているのだ。


あたしが白薔薇学園の生徒だということになんか、誰1人として気づいていないくらい。




「そろそろ直接言っておいたほうがいいよね?」



双雷ファンの女子たちがじっくり温めておいた企み、といっても牽制するだけなのだが、ついにそれを実行してしまうようだ。




不敵に笑う女子たちの敵視に、あたしは正体不明の悪寒を感じたけれど、気のせいだと思うことにした。


そんなことより、今大事なのはお兄ちゃんと登校することだ。