番犬男子






不意に、リンゴのような甘い香りが鼻をかすめた。


あたしの目の前にあるテーブルに、幸汰が1つのティーカップが置く。



「どうぞ」


「わあ、いい匂い」



この香りは、ジャーマンカモミールのハーブティーね。


ティーカップを持って、香りをたしなんでから一口飲んだ。



「美味しい!」



淹れ方が上手なのかも。


もしかして、お兄ちゃんがお茶好きになったのって、コレがきっかけ?



「喜んでもらえてよかった」


あたしの横に立っている幸汰の一言に、ハッとする。




「こ、こんなことで、あんたを気に入ったりしないから!」



あたしはハーブティーが美味しいって言っただけで、褒めたわけじゃないから!


幸汰自身と、幸汰のお茶を淹れるプロ顔負けの腕前は別だから、別!



「勘違いしないでよねっ!!」




幸汰からプイと顔を背けながらも、ハーブティーの美味しさにつられて口をつけた。


ハーブティーに罪はないもん。



そんなあたしに、雪乃も稜も幸汰も、一斉に噴き出した。



えっ、なんでまた笑われてるの!?






「チカちゃんは可愛いわね」



雪乃の呟きは、賑やかな笑い声にかき消されて、あたしには届かなかった。