その男子、殴ってやりたい。
心優しい雪乃を悲しませた罪は重いぞ。
「その男の子の他にも、私を気味悪がって疎む子がたくさんいて、『あぁ、そっか、私は変なんだ』って妙に納得しちゃってね」
「そこは納得するところじゃないよ!怒るところだよ!」
黙っていられず、前のめりになって反論する。
自分の太ももを拳でバシバシ叩いてるあたしに、雪乃は微笑んで「ありがとう」と囁いた。
「でも、その時は、普通とか常識とか曖昧で、怒れなかったのよ。だから、納得しちゃったの」
雪乃が窮屈な思いをしてることのほうが、納得いかないよ。
本当は、雪乃だってどこででも自分らしくいたいはずなのに。
「それからよ。私が外では、口調を変えて“僕”と言うようになったのは」
「生徒会長の件は、辞退するしかなかったの?」
「……ええ。私、学校で自分を偽ってるのよ?それって、みんなを騙してるのと同じことでしょう?」
否定しようとしたら、あたしの口の前に雪乃が人差し指を添えた。



