肯定も否定もしないあたしを察して、雪乃は続けた。
「私ね、学校はもちろん、双雷と家を除く場所では『私』じゃなくて『僕』と呼んで、自分を偽ってるの」
「どうして?」
「気味悪がられるからよ」
淡々としつつも、どこか脆く寂しそうな横顔に、胸が締め付けられた。
雪乃が雪乃らしくいられることは、当たり前なんかじゃない。
双雷という居場所があるからこそなんだ。
「私、姉弟がいるんだけど、私以外は全員女の子でね。姉4人と妹1人に囲まれて育ったせいか、幼い頃から私の周りは可愛い物であふれてたの」
心なしか、声が幸せそうに弾んでいる。
「ごく自然に可愛い物を好きになったわ。こんな口調になったのも、姉や妹と一緒にお人形遊びとかおままごととかして遊んでいたらいつの間にか、ね」
また、憂いて、沈んでいく。
雪乃はため息をこぼさないように顔を上げた。
「これが普通じゃないと気づいたのは、物心がつき始めた小学生になってからだったわ。仲良くなりたくてクラスの男の子に喋りかけたら、言われたのよ。『お前、変だ』って」



