「うん、聞くよ。雪乃の話、聞かせて?」
そう返すと、雪乃はほっとしたように瞼を伏せた。
一抹の間を置いた後。
「『みんなに拒絶されることを恐れて、自分を偽ってる“僕”が、生徒を代表する生徒会長になっちゃいけないと思ったんだ』」
開口一番に、昼休みに応えた言葉を再度紡いだ。
それなら、とあたしも口を開く。
「それ、どういう意味?」
昼休みに野次馬に邪魔されて、ちゃんと聞けずに終わった質問。
やっと、聞けた。
「そのまんまよ。チカちゃんもおかしいなって感じなかった?双雷での私と、それ以外での“僕”との違いに」
2人きりの時やここでみんなといる時、雪乃は一人称が「私」で女口調。
学校や、双雷とあたし以外の誰かがいる場所では、一人称が「僕」で男口調になる。
その違いにはすぐに違和感を覚えたけど、おかしいとは思わなかった。



