番犬男子





あ、でも、ちょっと待って。


10分前ってことは。

もしかしたら、繁華街で双雷のメンバーとすれ違ってたかも。



お兄ちゃんに会いたくて、会いたくて、すっごく急いでたから、周りに気を配れていなかった。


繁華街でお兄ちゃんとばったり出くわして、成り行きで「仲良し兄妹の放課後デート」ができるチャンスだったのに……!



くっそう!!




「チカちゃん、立ってないで座ったら?」


「……うん」



空いている自分の隣をポンポン叩く。


あたしは心の中で絶賛悔しがりながら、雪乃に促された通り、白のソファーに座った。



すると、幸汰が立ち上がった。



「何か飲み物用意するね」


「どうもっ」



あたしのつんけんとした礼に、幸汰は嫌そうな顔ひとつせず、ティーセットなどを納めた棚の前に移動していった。