番犬男子





一応礼儀として、幹部室の扉をトントンと2回軽快にノックする。



「はーい?」


幹部室から、雪乃の警戒心を帯びた返事がして、扉を開けた。



「あら、チカちゃん」


「こんにちは」


「さっき振りね。いらっしゃい」



白のソファーに座っている雪乃が、ほころびた顔だけを振り向かせた。




幹部室には、白薔薇学園の普通な男子の制服に縫ってある校章を、無難なベストで隠してる雪乃。


赤のソファーに腰掛けながら、あたしを見て軽く頭を下げた幸汰。


黒のソファーの背もたれに全体重を預け、あたしに挨拶をする気が一切ない稜。



この3人しかいなかった。





「お兄ちゃんと遊馬は?パトロール?」


「ええ。10分くらい前に行ったばかりよ」



やっぱりそうなんだ。




今回のパトロールの留守番組が幹部3人なら、洋館の扉にいつも鍵がかかっていない不用心さも関係なしに、たまり場を守れるんだろうな。


むしろ、それも一種のトラップだ。



そもそも、労力をかけてここまで足を運んでケンカを売るような、度胸だけは一丁前にあるやつはそうそういない。