番犬男子





空気を読んでくれて助かる。


相手が遊馬だったら、「今何か隠したろ」って直球で聞いてきただろうな。




「うん、言ったよ。それがどうかした?」


「なんか雪乃らしくないなぁ、って思って」


「“僕”らしくない?」



一瞬、雪乃のこげ茶色の瞳が、ゆらり揺れた。



あたしはまだ、雪乃と知り合って間もないけど、雪乃のことを知ってるよ。


雪乃がどういう人で、どういうことをして、どう過ごしているのか。


雪乃の“らしさ”を語れるくらい。



「どうして、自分を卑下するようなことを言ったの?」



純粋に気になったんだ。


優しい心を持つ雪乃が、あんなに寂しそうな表情をする理由が。



たまたま、ああ言っちゃったんじゃないんでしょ?




「チカちゃんも、西篠先生も周りのみんなも、“僕”を過大評価しすぎだよ」



雪乃はかすれた声で嘆き、俯いた。