痛みにもだえる余地も与えないまま、幸汰は強盗犯の胸ぐらを掴んで、拳を振りかざした。
侍を侮辱する意味と覚悟と、侍を利用して自分を大きく偽った罰を、教え込むように。
何度も、何度も。
……あたし、間違ってた。
本当の不良の世界は、今目の前でえげつなく繰り広げられている、コレだ。
殴った回数は、計り知れない。
最初は苦痛に喘いでいた強盗犯は、だんだんと感覚が麻痺していき、今にも気絶してしまいそうなくらい朦朧【モウロウ】としている。
あと1回殴られれば確実に意識が飛ぶというところで、幸汰はタイミングがいいのか悪いのか、拳を下ろした。
代わりに、顔を近づけ、ニヤリ笑う唇の隙間から八重歯を光らせる。
「また何かしたら容赦しねぇよ?」
あたしに何かしたら、じゃない。
双雷と侍に、だ。



