番犬男子





幸汰はしゃがみこみ、強盗犯の髪を引っ張って無理やり顔を上げさせた。




「誘拐してねぇって嘘ついた挙句に、総長を蹴散らせるだって?強盗も誘拐も失敗してるお前ができるわけねぇだろ」


「ぐ……っ、」


「お前のしょうもねぇプライド……いや、そんな大層なもんじゃねぇな、ただの妄言に、総長を使うんじゃねぇよ。汚れるだろうが」




殺伐とした威嚇が、あっという間にこの場を支配する。


あたしはただ立ち尽くすことしかできなかった。




「て、敵である侍を侮辱して何が悪い!」



無謀にも反抗する強盗犯に、幸汰の目が据わっていく。


あれは怒りを通り越して、何を言っても通じない、無意味だ、と悟った冷酷な目だ。



「あー、そう、んじゃもういいわ」


「は?」



間抜けな一音がこぼされた直後。



ドゴッ!!

先ほどと同じところを、先ほどよりも重く深く、幸汰が強盗犯をぶん殴った。



「グハッ……!」



強盗犯の口から血反吐が吐き出された。