番犬男子





明らかに、幸汰の雰囲気が変わった。




なに、これ。


寒気がする。



酸素が急激に薄くなったみたいに、息苦しくなる。





今まで逃走を重ねてきた強盗犯は、今回逃げるのは困難だと察し、半ば自棄になって嗤笑する。



「ああ、侍なんざ軽く蹴散らし……っ!?」



蹴散らしてやる、と言い終える寸前で、途絶えた。


幸汰の手が、乱暴に強盗犯の口元を覆ったせいで。




「黙れ」




低く、危うく、高圧的に噛みつく、命令調の声。



あの人は、誰?


あんなに、怒りを燃やしている幸汰を、あたしは知らない。




「んん、んんん~!?」


「黙れっつってんだろ」



口元を覆う力が、ギリ、と強くなる。