強盗犯とバイク男がお兄ちゃんに勝つ?
ははっ、ありえない。
それはもう見栄というより、たらればのでまかせだよ。
お兄ちゃんを見下した法螺【ホラ】吹きは、相手にしないのが一番。
「……へえ?」
全く取り合わないでいたあたしの斜め前で、ポツリ、幸汰が呟いた。
幸汰?
全身が、胸騒ぎに侵食されていった。
「本当に?」
「は?」
一歩、また一歩、幸汰が強盗犯との距離を詰めていく。
強盗犯は反射的に逃げようとするが、周囲は壁に囲まれていて、唯一の逃げ道である細い路地はあたしが塞いでいる。
そう、ここは行き止まり。
恨むなら、こんなところに隠れてた自分たちを恨むことだ。
「本当にあの侍を倒せると思ってんの?」
あ。
敬語が、なくなった。
タメ口のぎこちなさは、一切ない。



