番犬男子






地面に落ちたタバコを足で踏み潰す2人が気に入らなくて、あたしは思わず口を開いた。



「人違いなわけないでしょ!?」



あたし、自慢じゃないけど、記憶力“も”いいの。


あんたたちが今のムカつく顔じゃなくて、地味でのっぺらぼうな顔だったとしても、見間違えるわけがない。




「お兄ちゃんを見た途端、一目散に逃げた上にしらばっくれるなんて、男として情けないんじゃない?」


「あっ、あん時は、お、俺らがお前らを逃がしてやったんだよ!」



精一杯見栄を張る強盗犯がおかしくて、緩く口角を上げた。



強盗犯はこれっぽっちもわかってないんだろうな。


コンビニ強盗の時と同じく、たった今あんたが自分で墓穴を掘ったことに。


あたしがそうなるように仕向けて、言質を取ったことにも。



ちょろくて助かる。




「そ、それにな、俺とこいつの2人がかりでかかれば、侍くらいどうってことねぇんだよ!!」



は?