番犬男子






暴れ出す胸騒ぎに誘われ、幸汰のほうへ視線を泳がす。


幸汰は不敵に笑っていた。




「こ、うた……?」


「はい?」




か細い声で呼びかけると、幸汰はいつもの子犬のような様子で返事をした。


そのことに内心ホッとする。



「また敬語!」


「あ、は、はい……じゃなくて、うん」





幸汰が別人みたいに見えた、たったの一瞬が、あたしの脳裏に焼きついて離れなかった。






次第に口数が減っていく中、繁華街に到着した。


栄える繁華街に影を落とす、狭い路地を進んでいく。



遠くから、耳障りな笑い声がした。




「あ」


あたしの前を歩いていた幸汰が、足を止めた。