この頼みごとは、お兄ちゃんとしてではなく、双雷の総長として。
ここであたしが「嫌だ嫌だ」と断り続け、お兄ちゃんのそばを離れずにいるのは、ちょっとお門違いだ。
あたしの自己中心的なエゴを、むやみに振り回すつもりはない。
それに、お兄ちゃんは、幹部室に入れてくれたり名前を呼んでくれたりして、あたしのわがままをいっぱい叶えてくれた。
今度はあたしが、叶える番だ。
そして、強盗犯とバイク男の所在を稜から詳しく聞き、そこまでのルートを地図を使って決めた後。
「じゃあ、行ってきます」
あたしと幸汰は洋館を出て行った。
茜色の空は少し陰っていた。
夕闇が迫ってきている。
夕方の終わりを示唆するこの時間帯は、どことなく夏の暑さを忘れさせる。



