番犬男子






今回の頼みごとは、お兄ちゃんだと意味がなくて、幸汰だと意味がある。


それって、つまり――。




雪乃も稜も、あんなに行きたかがっていた遊馬も、今回命じられた幸汰も、今のお兄ちゃんの一言で全て汲み取ったようで。



雪乃は笑みをこぼして。


稜はあくびを漏らして。


遊馬はぐっと伸びをして。


幸汰は軽く目を閉じて。



各々、なるほどと言わんばかりの仕草をした。




もちろん、あたしも気づいてしまった。



けれど、みんなとは違い、表情や仕草には一切出さなかった。


出せなかった。


いっそ気づきたくなかった思いと、葛藤していて。





短い沈黙が過ぎる。


あたしは観念して、渋々頭を縦に振った。



「わかった。行ってくる」