番犬男子






すると、あたしが先ほどまでいた倉庫のシャッターが乱暴に開かれた。


そこから、強盗犯とバイク男が出てくる。




「逃げんじゃねぇよ、クソお……ん、な……」



強盗犯の覇気のある暴言が、語尾にいくにつれてしぼんでいく。


2人はお兄ちゃんの姿を見て、目を丸くした。



「なっ、なんでもう、さ、侍がいるんだ……!?」



想定よりも早すぎるお兄ちゃんの登場に、動揺の色を隠せないようだった。




お兄ちゃんはバイクを降りて、2人にガンを飛ばした。


ヒュッ、と呑んだ息が、バイク男の喉からこぼれた。




「お前らか?」



あたしの肩にお兄ちゃんの左腕が回され、ぎゅっと抱きしめられる。


お兄ちゃんの汗ばんだ手のひらに、涙腺が崩壊してしまいそうだ。



「こいつをさらったのは」




お兄ちゃん、本気で怒ってる。


あたしを想って、怒ってくれてる。



それが嬉しくて、嬉しくて、たまらなかった。