番犬男子





動揺する客たちにムカついた全身黒の男子は、銃口を今度は商品が並んでるこちら側に向けた。


銃口が右から左、左から右へとコンビニ全体に動かされていく。



「うっせえんだよ!静かにしろ!!」



コンビニ内がしん、と一気に静まり返る。




随分、短気な強盗犯ね。



あたしが一番、強盗犯と遠い位置にいる。


けど、目がいいから、強盗犯も拳銃も明瞭に目視できる。




あの拳銃。

それに、強盗犯の、不自然に膨らんだズボンのポケット。


あれって、もしかして――。




一瞬で理解し、憶測が正解に変わる。





あたしは強盗犯からバレないように、商品棚に身を隠しながら、スマホを操作した。


110、と番号を押し、警察に連絡する。




「早くしろっつってんだろ!」


「ひっ……!」


「さっさとここに金つめろや!!」



再び店員を拳銃で脅した、強盗犯の怒鳴り散らす声が最高にうるさかったおかげで、警察に通報したあたしの小声はかき消された。