もう二度と会うことはないし、そもそも会いたくないと思っていたのに。
なんで、こいつが普通に歩いてるの?
「警察に捕まったんじゃないの?」
「この俺が捕まるかよ」
「あー、逃げ足だけは速かったもんね、逃げ足だけは」
「逃げ足を強調すんな!」
ちょっと警察、こんなバカに逃げられてどうすんの。
もっと頑張ってよ。
それとも、こいつの逃げる速さがすごすぎたってこと?
まあ、なんでもいいや。
とりあえず通報しよっと。
警察対策にマスクして顔を隠してるんでしょうけど、あたしと会ったが運の尽き。
スマホを取り出そうとしたら、強盗犯がじーっとあたしを凝視してきた。
「栗色のボブ、つり目な茶色の瞳、上から目線な態度……やっぱ間違いねぇ。さっき女どもが噂してたのは、こいつだ」
「なに?」
上から下まで観察されて、しかもボソボソ呟いていて、すごく気持ち悪い。



