番犬男子





沈黙をはべらせた、あたしと稜という男子の、刺を含んだ視線のぶつけ合い。



もうしばらく続くかと踏んでいたが。


あっけなく、先にあっちの視線が地面に落とされた。




「……稜だ」


「はい?」



なに、突然。




「仁池【ニイケ】 稜」




これって、自己紹介のつもり?




周りを見渡せば、他の双雷のメンバーは警戒心をほどいていた。


――ただし、1人を除いて。



あたしはなんとなく、その1人に気づいていないフリをした。




「あ、あたしは……って、もう知ってますよね」


「敬語いらねぇ」


「え?」


「めんどい。ウザい」