近づくために嘘をつくのは感心しないけど。
「……ってことは、お兄ちゃん目当ての人だけじゃなかったんですか?」
「ええ、総長に限ったことではなかったんですけど、……そうですね、やはり総長目当てが一番多かったように思います」
幸汰はその時のことを回想しながら、困ったように眉尻を下げた。
さすがお兄ちゃん。
お兄ちゃんを好きになった人は見る目があるね。
あたしの調査じゃ、お兄ちゃんは今彼女いないけど、もしできたらあたしが妹としてしっかり見定めなくちゃ。
もちろん、1つでもお兄ちゃんの彼女として不合格な点があったら、別れてもらうよう仕向けてやる。
ブラコンにもほどがあるって?
そんなのとうの昔に自覚してる。
ブラコンの何がいけないの?
「中にはやべぇやつもいたよな。本気で誠一郎と付き合ってるって思い込んで、婚姻届送りつけてきた女とか」
「あの時は大変だったわね。相手が女の子だったこともあって、手荒なことはできなかったし。両親に挨拶しに来てってセイちゃんを連れ去ろうとした時は、さすがに食い止めたけれど」
「あん時の誠一郎のキレ方、半端なかったよなー。あれのおかげで、女たちは恐れをなして、最近はすっかり近づかれなくなったんだけどな。結果オーライってやつだな、うん!」
そんなことがあったのなら、あたしを疑うのも納得できる。
疑うな、と言うほうが難しい話だ。
おそらく、今までの女子たちと違って、堂々と双雷のたまり場に行ったから余計に怪しまれたんだろう。



