番犬男子





胸の内側に、なんとも言えない黒い感情がフツフツと沸き上がってくる。



もしかして、これを「憎悪」と呼ぶのだろうか。


あるいは「殺気」というものだろうか。




どちらにせよ、偽妹を演じた罪を罰してやるほかあるまい。




「ストップ、ストーップ!落・ち・着・け!!」



遊馬がいきなり両手に前に出して、どうどうとあたしをなだめた。



「なんですか?」


あたしは至って落ち着いてますよ?


ちょっと腸が煮えくり返りそうなだけで。



にっこり笑顔を繕ってあげたら、遊馬はまた「落ち着けー!」と声を張り上げた。



「『なんですか?』じゃねぇよ!とりあえずその黒いオーラしまえ!怖ぇよ!!」




不良が小娘を怖がってどうする。


あたし、そんなに怖そうにしてた?